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食のパラレルフューチャー

THE OYATSU Vol.8|食のパラレルフューチャー

GUEST|Salmon & Trout / 森枝 幹(もりえだ・かん)
シドニー「Tetsuya’s」で修行後、帰国。ミシュラン二ツ星の日本料理店「湖月」にて和食の技術を学んだ後、マンダリン オリエンタル 東京の「タパスモラキュラーバー」で、化学を応用した調理技術を習得。その後「omotesando sakaba」などを経て、2014年8月、現店「Salmon&Trout」のオーナーシェフとなる。

Future A|食はサイエンスとテクノロジーとともに

大谷:これから話していくのは、食の未来の話です。
タイトルにある「パラレルフューチャー」とは日本語で平行する未来。今回は、今後来るであろう未来を「Future A」「Future B」と2つに分けて予想しました。
「Future A」では、サイエンスとテクノロジーが進化すると、食はどうなっていくのかということをポジティブな視点で見ていこうと思います。
「Future B」では、食料が不足していったときには、どんな食のあり方が考えられるか。さらに、そこにどのようなクリエイティブティを込められるかという話をしていこうと思います。

サンセバスチャンとエル・ブジのイノベーション

大谷:まずは、サンセバスチャンという街の話から切り出そうと思います。過去の回でも少し話したのですが、スペインのサンセバスチャンという都市で起きたある出来事について。
サンセバスチャンは、面積あたりのミシュランの星の数が世界一位と言われている都市です。すごく小さいのに、やたらと星を取っているという。しかも、ここ10年くらいの話です。
なぜそうなったのか。彼らの都市は、観光産業に力を入れようとなったときに、料理店にある変化を起こしました。というのも、そもそも普通のお店ってそれぞれのレシピを代々受け継ぐという形を取っていると思うのですが、ここでは都市単位でレシピを共有するというレシピのオープンソース化を行ったんです。
そうすると、どこかのシェフが珍しい食材を見つけたり、新しいレシピを開発すると、都市単位で共有される環境が作られた。そういう流れで、大きな規模でイノベーションが起きたわけです。

「エル・ブジ(※)」が、大事にしているポイントは3つあると言っていて、そのひとつが、レシピをオープンソース化するということなんです。ガストロノミーのお店では、こういうことは普通なんですか?
※イギリスのレストラン誌「世界のベストレストラン50」にて1位に5度選ばれるなど、世界一予約の取れないお店としてなを馳せた名店。2011年閉店

森枝:レシピを公開するというのは、なかなか聞いたことがなかったですね。

大谷:誰もアクセスできなかった情報を使って、他の人が料理を進化させるということが重要なポイントですよね。もうひとつ「エル・ブジ」が言っていたことは、集合知。チームでものを作るという考え方ですね。職人的に一人だけで追及する方法もあるのですが、集団で考えるという思想が生まれた。

そして、もうひとつは、異業種交流。料理にサイエンスを持ち込んだんです。料理に異分野を持ち込むことでイノベーションを起こすというのが、重要なポイントですよね。とくに、オープンソース化と集合知という部分は、サンセバスチャンの事例と通ずるものがあるのではと思っています。

森枝:そうですね。僕もそういう事例を参考にして、日本の料理に変化を加えようとしています。例えば、バーテンダーと組んで、新しい食材を取り入れてみたりしています。みんなでシェアして考えていこうという流れを大切にしてますね。

大谷:そういう流れが日本でも起きているという実感はある?

森枝:僕はありますね。

大谷:シェアをするという流れを作るうえで、日本での課題はありますか?

森枝:自分がアクセスしたいという情報があれば、レストランへ研修に行ったりすることも当たり前になってきているので、あまり課題は感じないですね。
 

川井:逆に言うと、シェアすることで、それぞれのお店の独自性までも共有してしまうわけじゃないですか。そこに対しては、シェフ的にどうなんですか?

森枝:よくシェフの仲間と話していることがあって、シェアしすぎた結果、世界の料理がグレーになっているよね、と。つまり、いろいろな国の料理が混ざりあった結果、地域性が薄れたっていう(笑)。どこかで良いと言われたものを、世界のみんなが使うから、パリでもニューヨークでも東京でも、みんなおいしいけど、似ているという現状はある気がします。

大谷:なるほど。「エル・ブジ」は、のちに財団を立ち上げたんですよね。そこで、料理研究所を立ち上げるということを1年前に発表したらしくて。レシピや素材をオープンソース化していった彼らが、今度はデータベース化して保管する方向へ向かった。料理の百科事典的なものを作ろうと「ブリペディア」というプロジェクトで進めているそうです。

森枝:アメリカでも料理の百科事典的なものを出していたので、そういう流れなのかもしれないですね。

 

大谷:料理人側にもサイエンスの要素が入り込み始めているということですね。ここで疑問なのは、この流れが進んだ先に、何が起きるんでしょう?AIとも関連してきそうですが、料理の分析が進んだ末に、何を求めているのか?という。

森枝:それ聞いちゃう?(笑)。どうなるんでしょう。「エル・ブジ」がやっていたような食の実験が、もっとスムーズにできるようになっていくんじゃないかな。

大谷:それは我々の日常の側に可能性があるということ?

森枝:そうだと思います。……ちょっと考えさせてください(笑)。

大谷:(笑)。それでは、考えてもらっている間に、テクノロジーの側の視点から川井さんにお話を聞いてみようと思います。

 

食以外のプレイヤーの流入とオープンマインド

川井:FabCafeってものづくりとカフェが一緒になっている場所なのですが、ものづくりイベントをやっていると、意外にも食に関わることって多いんですよ。例えば、バルセルナの支店では、フードラボの機能が備わっています。そのなかで感じるのは、プレイヤーの質が変わってきているということ。

この間、ロンドンで「YFood」というプラットフォームのイベントで「Food Tech Week」というものがありました。年に一回ほどやっているもので、イギリスの料理人ジェイミー・オリヴァーなどが支援してたりします。このイベントでは、テクノロジーがフードに対して、何ができるかということを話していて、食の安全性や廃棄率をどう下げていくかなどがテーマになっています。
しかも、「YFood」を立ち上げたのは、シェフなどではなく、ほとんどが飲食業界以外の人間なんです。女性が多いのですが、財団にいた人だったり、ベンチャーキャピタリストに近い人が集まって生まれた団体です。

あとは、中国やオーストラリアの団体で、フード関連でのスタートアップ企業のアクセラレーター(スタートアップを支援する役割)がいます。この人たちも、フードというよりも、ビジネス視点やクリエイティブの視点を持ってる人が多くて。

そんなふうに、僕らの周りではフードに関わるプレイヤーが変わっているということを感じています。そのへんは、森枝くんのような動きをしている人が活躍できる場なのでは?と思うんですよね。

大谷:森枝くんはオープンに受け入れられると思うのですが、料理人全体としてはそういう動きはどう感じているんでしょう?

森枝:フードの廃棄は、シェフのなかでも関心は高いし、同じ問題意識を持っていると思います。クリアしなければならない問題を共有していくのはやらないといけないと思います。
 

川井:食をさまざまな切り口から見ていくのは、シェフだけだとやりづらい部分があると思っていて、これは食虫の話なのですが、彼らは食自体だけではなく、流通などの部分もカバーしようとしています。これまでは、食というと流通と飲食というふたつの見方がありましたが、今は、食を利用してソーシャルイシューを解決していくだとか、周辺の人たちが参加する流れが強まってきていると感じるんですよね。

森枝:そういう人たちと手を組んでやっていけたらいいなと思いますね。

大谷:そういう流れに対しては、業界としてはネガティブな意思はなく、面白ければやっていこうという人たちが多い?

森枝:ちょっとずつそうなってきていると思いますね。
 

テクノロジーとシェフの関係

大谷:テクノロジーの話に戻ると、料理人の立場から、テクノロジーに期待することはありますか?以前は、AIなど人間が到達できない部分を代換してもらうなどの話をしていましたが。

森枝:僕ら自身は、毎日新しいレシピを考えたり、新しい体験をしてもらいたいと考えながらやっているので、そういうことの手伝いをやってくれたりすると楽だなと思います(笑)。

川井:ガストロノミーの場合って科学的な方程式で料理を作ることが多いじゃないですか。一方、普通のシェフは、味をベースとした方程式で作っていく。このふたつって森枝さん的にはどういうバランスでやっているんでしょう?

森枝:食材から考えていく方法と、すでに完成系が頭のなかにあってそこに近づけていく方法のふたつの作り方があると思っていて。そこにどう当てはまるか次第ですね。
 

川井:なるほど。プレイヤーが変わってきているという話の続きで、食材も変わってきていると思っていて。例えば、「コーヒーフラワー」というものがあって、コーヒーでは使われてこなかったパルプと呼ばれる部分を乾燥させて粉にしたあと小麦粉に混ぜているものです。焼き菓子などたくさんの料理に使うことができるものですね。このような変化は、技術の進化と、それまで使われてこなかったものを再利用しようというニーズによると思うんです。

もうひとつの例は、パンの酵母でビールを作るというもの。この例は、すごくメッセージ性が強くて、フードロスを改善するということをわかりやすく示すためのものです。儲けを目指してやっていなくて。こういう活動とか、テクノロジーと世の中の流れによって、新しい食材が生まれていると思います。こういった流れはどう感じていますか?

森枝:やっぱりフードロスの問題は大きいなと思いますね。僕個人は、発酵に力を入れているところで。それには、研究所の知見なんかも利用したりして。

川井:研究所の人たちが持っているような情報は使ってみたいという思いがあるんですね。

森枝:そうですね。日本で食を変えていくようなテクノロジーがさらに増えたらもっと面白いと思います。




日本のフード系スタートアップが目立たない理由

川井:日本では先ほど話したような動きってまだあまり出てきていないのかなと思いました。あるにはあるのですが、日本の場合は、研究所が主体になっていることが多くて、商品を作ってアピールするというような方法は見ないですね。

大谷:話をズラしてしまうかもしれませんが、フード系のスタートアップが日本で育つかどうかということでは、過去のOYATSUにも出演した「Minimal」がうまくやっているんじゃないかと思うんです。フード系のスタートアップが日本では目立たない理由ってどんなところにあると思いますか?コンサルだった視点も含めてなにかあれば。
 

山下(Minimal):たぶんシェフとの距離が心理的にも物理的にも遠いということがあると思います。スタートアップの文脈で言うと、ものづくりは機材など揃えるのに初期費用がかなりかかりますが、ITの場合はそれよりも全然安い部分が関係しているのかなと。それに、職人的な経験値による基準とビジネスの効率重視の基準って相反するものがあるので、それもあると思います。

大谷:ありがとうございます。職人的な視点とビジネス的な視点が相反するというのは、たしかにそうかもしれませんね。
 

料理の社会的価値を考える「MAD」

大谷:コペンハーゲンで「MAD」というフードシンポジウムが開催されました。TEDのフード版のようなもので、食が社会的にどのような機能を果たすかということを議論しています。ここではこのイベントについて紹介しようと思います。

森枝:「ノーマ(※)」のシェフが設立したNPOの活動の一環で、シェフだけではなく、さまざまな人が参加しています。例えば、畑ではなく、普通の道に種を撒いて野菜を育てるだとか、そういう未来の食の可能性について話しているイベントですね。
※デンマーク・コペンハーゲンのレストラン。独創的な料理で知られており、北欧料理の新たなスタンダードを築き上げた。

大谷:このイベントでは、食材自体よりも、「料理って何だ?」というような思想の部分を重視しているところが特徴で。例えば、建築家から見た食はどうあるべきかなど、学者を参加させて議論したり、世界的なシェフを呼んでスピーチをしていたり。料理の社会的な意味を拡張していくうえではすごく面白い取り組みです。




限りなく日常に近い非日常

大谷:時間がないようなので、次のトピックに行きましょう。「カジュアル化する食」について森枝くんから話してもらえますか?

森枝:301と一緒に本を作ったのですが、そこに書いてあるのは、コース料理で3時間くらい取られて食べる行為はだんだんとしんどくなってきているよねということで。今は、日常のリズムに合うような食事をしたいというふうに変化してきているんじゃないかと思うんです。
 

大谷:本で取り上げたテーマは、日常と非日常の境界線についてなのですが、外食をするという行為自体は、非日常の行為ですよね。そして、今は、非日常の境界線が日常へと近づいていっているのではないかと。感覚としては、日常に近いものだけど料理はプロの感覚を持っている人たちが出すという。だから、ただカジュアル化すればいいというわけではないんです。コースを作るような人があえてそれをやっている。

川井:OYATSUの裏テーマではないけど、このプロジェクトを立ち上げた時に話したことがあって。それは、実験的なプロジェクトとして始めた後に、これをどうやってビジネス化していくかということです。それで、さっき話した境界線の話につながってきて、シェフが持っている第6感みたいなものを、僕らがビジネスに取り入れられるんじゃないか、と。

例えば、イベントの際はシェフ提供という形でフードのみを出していたのですが、企画の段階にシェフからアイデアなどを出してもらえるようになると、ある程度、ビジネスとして組み込めるんじゃないかなと思います。

大谷:そうですね。301では、OYATSUで知り合った料理人の方たちと一緒に企画を作っていくということが出来始めていて、その辺は、進めていけば面白いことができそうだなという感覚はあります。
 

コンセプトは「未来」。干し柿のOYATSU

大谷:森枝くん、今回のOYATSUの説明をお願いします。このあと、OYATSUに合うワインも用意していますので、先に全部食べないように……。

森枝:僕は、和の食材を使うことが多くて、今回は柿を食材として使いました。干したイチジクにナッツなどを入れてロール状にしたお菓子があるのですが、イチジクを柿に代えて、バターを入れました。見た目的にはサラミに見立てて作っています。もうひとつは、ラムネ状にした柿です。これは、フリーズドライにした柿を粉末状にして、ラムネの中に混ぜ込んだものです。

干し柿というイメージ的に野暮ったいものをワインなどに合わせられるようなスタイルに変えていく部分や、フリーズドライにして作る部分は、自分にとって実験的な部分です。

川井:柿って食材として使いやすいんですか?癖がありそうですけど。
 

森枝;癖がありますね。酸味がないから、酸味を加えると、柿の味じゃないとなってしまうし。難しい食材のひとつだと思います。

大谷:ワインもテーマと合わせて未来をイメージして選んでいるので、森枝くん、説明をお願いします。

森枝:未来っぽいワインって結構難しいオーダーですよね(笑)。ナチュラル系のワインが今流行ってきていて、いろんな国で作られているのですが、そのなかでも、これは南アフリカ産のワインです。ワインを作るための新しい場所が求められているなか、その代表格として南アフリカがあります。このワインのおもしろいところは、「完全にナチュラルではない」ということをあえてラベルに書いてあるところ。人の手を少しだけ加えているということを、公に言ってしまうのは、ナチュラルにこだわりすぎている部分へのカウンターになるんじゃないかなと。

川井:じゃあ、お召し上がりいただいたところで、最前列に座られている過去のOYATSUのゲストの方に感想を聞いてみましょうか。
 

大谷:sansaの橋本さん、お願いします。

橋本(sansa):食べてみて美味しかったし、見た目とは違って、柿を食べるとノスタルジックな感覚が生まれたのが面白かったです。

大谷:次は、Fuglenの空人くん、お願いします。

野村(Fuglen Tokyo):ワインとの合わせ方がすごく好きで、とても美味しかったです。なぜこれをドライにしないといけないのか、それがどう未来に関わってくるのかということを森枝くんから聞いてみたいですね。なぜここに行き着いたのを知りたいと思いました。

大谷:Minimalの山下さん、お願いします。

山下(Minimal):美味しかったです。ちょっと斜めからくる感じが森枝くんらしい合わせ方だと思いました。サラミのように見立てているとのことですが、この視覚と味覚のギャップが心地よいものかどうかという部分はどう考えているのか気になりました。

大谷:Celaravirdの橋本さん、お願いします。
 

橋本(Celaravird):美味しかったし、ワインとの合わせがいいなと思いました。見た目がサラミなので、辛味が入っているのかなと思ったのですが、そんなことはなく、森枝くんらしいシンプルな作り方だと思いました。

大谷:みなさんありがとうございます。それでは、OYATSUを作った経緯を話してもらえますか?

森枝:インドネシアのカルマンタンというところで、純胡椒を作っている人がいて。純胡椒は、生の胡椒を塩漬けにしたものなのですが、その生産者と仲良くさせてもらっていて、その人は、冷蔵庫はないし、そもそも電気も通ってないような環境にいる。それってフューチャーなんじゃないかと思って。電気などのインフラがなくても作れて保存ができるものが、新しいんじゃないかと。なので、干し柿を使ってみました。

大谷:あとでもうすこし突っ込んで聞いてみたいと思います。
 

Future B|食の思考実験で100年後の未来を考える。

大谷:将来的に食料が不足していくという見通しがあるなかで、どう人類が捉えていくかという壮大な話から、それをどう噛み砕いていくかという話をしたいと思います。100年後のお弁当を作ってくださいという企画を森枝くんと一度やったのですが、この事例を使って考えていきます。今後、食料不足が進むと、タンパク質をどう摂取するかという問題や、残っていく食材は何なのかということを考えながら、作ってもらいました。これがどういう理由で行き着いたのかということを説明いただければと思います。

森枝:100年後ってまったく分からないですよね。ひとつ言えることは、2100年には、人口が105億人と言われていて、間違いなく食料が足りなくなるだろうな、と。

・ダチョウと蕎麦粉のアメリカンドッグ
まずダチョウは、飼育効率が良く、栄養価が高いということで選びました。それに、エサなどの穀物に麹菌を加えることによって、少ない量で太りやすくなるということがあるらしくて、未来では、発酵したエサをたくさん食べているんじゃないかなと思います。

・いなご佃煮の卵焼き
あとは、虫ですよね。虫を食べることになったとしても、食べたくないという人はどのくらいいます? (客席に挙手を求める)意外と少ないですね。

川井:比率から言うと、3分の1くらいですかね。むしろ食べたことがある方は? だいたい男性ですね。

大谷:実は、虫って見た目がよくないんじゃないかと思うんです。鳥も、生きているままの状態だと抵抗が出てくる人もいると思います。

森枝:それに、海のなかにいるものも良く見たら結構気持ち悪いものが多いですよね。未来から見たら、そういうところのタブーって変わっているのかなと思いますよね。僕のお店も変わった食材を使うようになっていて、琵琶湖の水深の深いところにいるブラックバスを使っていたりとか。泥臭いとか、骨が多いとか、マイナスのイメージがあると思うのですが、ウチに来ていただければ、おいしく召し上がれますよ……という宣伝を(笑)。

大谷:宣伝(笑)。
 

森枝:あとカラスが意外においしいって話を聞いて。引かないでください。渋谷にいるようなカラスではないので、安心してください(笑)。これはまだ食べていないので分からないのですが。

川井:ネガティブなイメージもあるけど、実際食べてみたら美味しくいから使ってみたいという新しい食材があるということですよね。

森枝:そうです。ブラックバスとかも普通に美味しいんですよ。お店ではあえて最初には言わず、「白身魚のソテー」と言って出します。大体、「美味しい」と言ってくれますね。

大谷:この弁当を作ってから1ヶ月程経ちましたが、新たに気づいたことってありましたか? これとは別の未来の可能性とか。

森枝:別の未来……食糧難はやっぱり頭にあって、食の価値基準が変わっていそうだと思いました。今、高価ではないものが、とても高価になっているような。

川井:今回はお弁当ということで、調理法はシンプルなものじゃないですか。例えば、コース料理とかになってくると、調理法はどう変わっていきそうですか?

森枝:調理法というより、気になるのは食感。人間の顔ってどんどん顎が細くなっていってるんですよね。それは、柔らかいものを好む傾向があるからなのですが、未来でもフワフワ、トロトロとしたものが好まれるんじゃないかなと思います。

川井:最近、魚でも骨を抜かれて、柔らかくしたものが多いですよね。

大谷:ヨーロッパですべての食材を粉にしてしまって、それを合わせて料理を作るということをやっていた気がします。それに近いですよね。
 

ロボットアームが料理を覚えるとき

大谷:みなさんから未来はどうなっていくかという意見を集めたのですが、いろんなものが進歩していって新しいものが生まれてくることに期待しつつも、一方で、作り手の温もりとか、ローカル性がなくなっていくことへの疑問や違和感もあるみたいで。そのあたりのバランスってどうなんでしょう。

森枝:外食に行く理由は作り手を求めるという、そこだけになると思っていて。ただ、ロボットアームがキッチンに付いていて、調理の全行程をやってくれるというものも生まれ始めてる。

川井:今はまだ決まった料理だけですけどね。この間、FacCafeが三越でロボットアームを使ってバリスタを再現するという試みをやったんです。あれは動きを設定しないとできない。その先の何を作るかということは考えられない。

森枝:次は、シェフが作るための動きをロボットに教えて再現するというふうになりそうですよね。そうなると、家でもかなり美味しいものが普通に食べられるということになりますよね。20年くらい先には当たり前になってそう。

川井:そんなにかからないんじゃないかな。

森枝:シェフがいない!と言っているレストランは、全部ロボットアームが導入されそうですね(笑)。
 

川井:安全性を心配されている人が結構多かったのですが、この間、中国に行ったときに、中国人の友達は、普通のレストランに入ると一切食べないと言うんですよ。厨房で何が行われてるか分からないのがダメみたいで。もちろんちゃんとしたレストランに行くと食べるんですけど。そういうことがあると、作る工程をいかに透明化するかということが大事になってきますよね。でも、工程に人が介在すると、不確定要素が多すぎるんです。そのなかで、オートメーションを導入すると、安全性を確保できるんだろうなと思いますね。

さらに、僕はバリスタでもあるのですが、働いている側の心境からすると、作ることだけに時間を割くよりも、他に時間を使いたいときにロボットを使えばいいと思うんです。そうなると、レシピの研究やワークショップ開催など、他の部分をブラッシュアップできると思って、オートメーションに興味を持てるようになりました。

大谷:以前、空人くんと話をしたときに、ボトルドカクテルの話になって。普通は目の前で作ったカクテルを提供すると思うのですが、あらかじめ作っておいたものを出すというのがボトルドカクテル。なぜそれをやるかというと、事前に美味いカクテルを作ることで、提供する際のプレゼンテーションに集中できるという考え方で。そういうニーズはあるかもしれません。
 

ロボットが知覚できないもの

川井:日本酒の「獺祭(だっさい)」も、自動化されて作られている部分があるそうです。僕らが三越でコーヒーを売ったときも、もちろん目新しさもあるのですが、上手に作るというプロセスは担保しているので、お客さんは買ってもいいと思ってくれるんですね。

森枝:たぶん機械ではできないような部分に今は注目が集まるようになってきていて、均一化とは反対に、雑味とかそういうものを求められていると思います。

川井:シェフ的にはそういう味のブレはポジティブに捉えているんですか?

森枝:例えば、チーズは嗅いだらくさいけど、食べられているわけで、味のなかに少しネガティブがあるという状態ならいいんじゃないでしょうか。
 

川井:味の再現性って昔の日本料理人であれば何年も修行して得るものじゃないですか。その再現性が担保されると、その味をどう変えていくかということに時間が割かれることになりそうですよね。山下さんどうですか?

山下(Minimal):僕もそこは大事だと思うのですが、シェフの経験とか勘って最後の味の判断をするうえで必要だと思っていて。カカオは、同じ農園で同じ期間で作っていたとしても、麻袋によって味が変わったりするんです。その味の変数を調整していく感覚は、ある程度、オートメーションで対応できると思うのですが、微差を判断するのはシェフになるんじゃないかなと。

大谷:シェフなど職人的なレベルを持っている人たちが、そういう感覚をきちんと論理化することにコミットしてシステムを構築していけば、さらに進んでいきそうですね。

川井:この間、5つの味覚を知覚する機械で、コーヒーを試してみたのですが、例えば、コーヒーを注ぐときに、「の」の字を描くかどうかで味が変わるのかと計測してみると、数字には出ないわけです。でも、なんとなく普通に注ぐよりも美味しそうというイメージがある気がして。そういう職人的な所作の部分は、ただ単に見た目によるものなのか、それとも味の違いに現れているのか、気になるところですよね。

森枝:味は見た目だけではないということもあります。見た目は95%と言いますしね。それに、何が美味しいと感じるかも人それぞれですし、そこも難しいですよね。国によっても全然違うし。
 

質疑応答

大谷:話が広がってきたので、最後に質問をいくつかあればお聞きしようかなと思うのですが、いかがでしょうか?

質問者1:OYATSUというテーマを考えたときに、我々が接しているいわゆるおやつは、昼ごはんと晩ごはんの間に食べる甘いものというイメージがありますが、それは将来的に変わっていくと思いますか?

森枝:今は、子ども以外に、ゆっくりとおやつを食べられる人がいなくなってますよね(笑)。

川井:おやつってご褒美的なところがあるじゃないですか。勉強をした後とか、仕事をして疲れた後とか。そういう意味で言うと、どんどんおやつのクオリティが上がっていってる気がして、朝昼夜に加えて、第4の食事として、栄養価が高くなったりしていくのかなというイメージはあります。

大谷:おやつを買うシーンとしてはコンビニとかが多いと思うのですが、プレミアムなカフェとかができるんですかね。

森枝:趣味というか嗜好性が高くなっていきそうですね。カカオの味の違いでチョコレートを食べるようになったりだとか。フレーバーの幅がどんどん広がっていくと良いですよね。

質問者2:食のグローバル化について、人種間での味覚の差はあると思っていたのですが、人種は違えど、同じ地域で育てば味覚は同じになるのかなと思いました。それってどうなんでしょう?

大谷:料理人目線ではないのですが、その人が何を食べてきたかによって食への見方が変わるんじゃないかなと思っていて。味を受け取る細胞が小さい頃に生成されるらしくて……。
 

森枝:あっ……ひとつ思い出したことが。アフリカってアクを引かないんですよ。音楽もそうなのですが、とにかく音が多い。細かい音を聞き分けて、それを心地よいと感じていて、持っている人の能力で感じ方が違うんだなと。味蕾の数が多いのかは分からないですが、アクの味を感じられるんですよね。経験もあるかもしれないのですが、やっぱり人種による違いはあるのかもしれません。

川井:参考になるかは分からないのですが、僕がシンガポールに住んでいたときに、ラーメン店へ行くことがあって。日本人シェフがいる間はおいしいんです。でも、いなくなると、間違いなく味が変わっていて。マズくなるというレベルではないのですが、何かが足りない気がするんです。日本人が食べておいしいと思うポイントをちょっとした調整で作っていくというのは、地域が違うと分からない領域がどこかにあるのかなと。

大谷:小さい頃に食べるものが均一化された世界では、感じ方も均一になる気がするのですが、どうですか?

森枝:それはすごく気持ち悪い世の中ですね。

大谷:だからこそ、カウンターとしてナチュラルな方向へ向かっていく流れがあるのかもしれないですね。
 

OYATSUプロジェクト終了

大谷:ここらへんで締めましょう。これで1年に渡るプロジェクトが終了します。これまで、さまざまなゲストの方と、どうやったら食が面白くなるかということを考えてきました。これから何をしていくかというと、「食べる」という部分から発展させて、料理人たちと一緒に何かを「クリエイト」していくという方向にシフトしていこうと思います。これからの動きにもご期待ください。

ということで、本日の OYATSUは終了させていただきます。ありがとうございました。

※最終回となるTHE OYATSU Vol.8では、過去に参加いただいたゲストの方々も参加。トーク中は、ゲストの方々にもご意見を伺いました。

EVENT INFOMATION

THE OYATSU Vol.8|食のパラレルフューチャー

DATE= 2016 / 12 / 5(Mon)
TIME= 19:30 open / 20:00 – 22:00
PLACE= FabCafe(東京都渋谷区道玄坂1-22-7 道玄坂ピア1F)
MORE INFO=
内容: OYATSUの実食 / トークショー / 懇親会
費用: 3,000円(ワンドリンク+OYATSU+スペシャルワイン込み)
定員: 50名予定

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